財産開示手続とは
目次財産開示とは | 財産隠匿は難しい |
財産開示の注意点 | 確定判決実現手段 |
財産開示手続きの流れ | 開示しない場合の罰則 |
公正証書は使えるか? | 財産開示手続きの条件 |
財産開示制度の具体例 |
裁判所が財産の開示を命じる!
民事執行法改正により新しくできた制度が
「財産開示手続」です。
これまでの金銭執行の手続では、債権者は執行の対象たる債務者の財産を特定して手続きの開始を申立てることが必要でした。
しかし、債権者には債務者の財産を探すための法的手段が
与えられていないため、債務名義を取得しても、
執行手続を開始することが困難な場合も多かったのです。
そこで、改正法は、債権者の申立に基づいて、
裁判所が債務者に対し財産の開示を命じる手続きを創設しました(民執第196条第207条)。
財産状況の陳述
債務者が養育費を支払ってくれなくなった場合は、裁判所に
「債務者を呼び出してくれ」と申立ができます。
すると裁判所は、「何月何日に裁判所に出頭しろ」
と債務者を呼び出してくれます。
出頭した債務者は宣誓をした上で自分の財産状況を陳述 しなければなりません。
裁判官のみならず申し立てた債権者の質問にまで答えなくてなりません。
裁判所が財産の開示を命じる!
民事執行法改正により新しくできた制度が
「財産開示手続」です。
これまでの金銭執行の手続では、債権者は執行の対象たる債務者の財産を特定して手続きの開始を申立てることが必要でした。
しかし、債権者には債務者の財産を探すための法的手段が
与えられていないため、債務名義を取得しても、
執行手続を開始することが困難な場合も多かったのです。
そこで、改正法は、債権者の申立に基づいて、
裁判所が債務者に対し財産の開示を命じる手続きを創設しました(民執第196条第207条)。
財産状況の陳述
債務者が養育費を支払ってくれなくなった場合は、裁判所に
「債務者を呼び出してくれ」と申立ができます。
すると裁判所は、「何月何日に裁判所に出頭しろ」
と債務者を呼び出してくれます。
出頭した債務者は宣誓をした上で自分の財産状況を陳述 しなければなりません。
裁判官のみならず申し立てた債権者の質問にまで答えなくてなりません。
財産開示手続における注意点
財産開示制度の創設にあたっては、
債務者のプライバシーの侵害や濫用、
債務者に不当な圧力
を加えるおそれがあるなどの理由から
次のような対策が施されました。
債務名義が限定されている
基本となる 債務名義の種類が限定 されました。
執行証書(執行認諾条項付公正証書など)などの
債務名義は除かれた、ということです。
3年の開示制限
一度開示がなされると原則として 3年間はその債務者に対して
開示を命じることはできない 。(第197条第3項)
開示期日は 非公開
記録は関係者だけに開示
開示事件の記録中、開示期日に関する部分の閲覧は、
申立人、それと同等の資格(債務名義の所持など)を有する債権者、
債務者等に限って許されています。
目的外利用は禁止
申立人および記録の閲覧等をした者が得た情報の
目的外利用・提供は禁止される(民執第201条・第202条)。
財産開示手続の流れ
申し立て ↓ 実施決定 (債務者の財産を開示させる手続を 実施するという決定) ↓ 財産開示期日の指定 ↓ 財産目録の提出 ↓ 出頭 ↓ 宣誓 ↓ 財産を開示する陳述 ※虚偽の陳述には、過料の制裁が加えられます 。 |
公正証書は使えません。
申立資格を持つのは、執行力(強制執行を
認めるという 裁判所 のお墨付き)
のある確定判決や和解調書等を有する債権者です。
執行力があるものであっても執行受諾文言付公正証書ではダメです。
そしてこの債権者が債務者の財産を競売しても回収できなかった場合ないしは回収できそうもないと説明できた場合に、申し立てられます。
(改正民事執行法第197条)
裁判所が財産の開示を命じる制度!
平成15年8月に民事執行法が改正され,
債権者の申立てにより, 裁判所 が債務者に
財産の開示を命じる制度 (財産開示手続)が新しく設けられました。
この手続は,平成16年4月1日から利用できるようになりました。
財産開示制度、速習
交通事故で被害を受けたAさんは,
加害者のCさんを被告として,損害賠償請求訴訟を起こしました。
Aさんの請求は認められましたが,Cさんから賠償金を払ってもらえないため,
B弁護士のところへ相談に訪れました。
加害者のCさんに300万円の支払を命じる判決
が確定しました。しかし,Cさんは,お金を全然
支払ってくれないのです。
B Cさんはお金に困っているのですか?
A そのようなことはないと思います。大きな会社
に勤めていましたし,法廷に来るときも高そうな
洋服を着ていましたから。
B Cさんに財産がなければ,現実に支払ってもらうことは難しいのですが,もし価値のある 財産 があるなら,それを 差し押さえ て,そこから支払を受ける
「強制執行」の手続をとることができるかもしれませんね。
ただ,そのためには,差し押さえる財産を特定しなければいけません。
A 私も強制執行の手続をとろうと思って調べてみたのですが,
どこにどのような財産があるのか結局分からなかったのです。
B Cさんの自宅は調べてみましたか?
A 法務局で登記簿を調べてみたのですが,Cさんの物
ではありませんでした。借りているようですが詳しい
ことは分かりませんでした。
B 給料を差し押さえれば,金額は少なくても毎月確実に支払ってもらえるかも
しれませんね。
A 事故を起こした当時に働いていた会社は辞めてしまったようで,
今どこで働いているのか分かりません。
B 退職金などを,どこかの金融機関に預けているかも
しれませんね。
A 多分,預金などもあると思うのですが,
どこの金融機関に預けているのか分かりません。
それに,日本中の金融機関を調べるのは無理です!
B まあ,まあ,そんなに興奮しないでください。ところで,
事故を起こした自動車はCさんの物だったのですか?
A いいえ,自動車は友達から借りていたようでした。
B それなら仕方ありませんね。Cさんの自宅に高額
の貴金属や骨董品などの動産があるかもしれま
せんが,私の十数年の弁護士経験からいえば,
執行官に自宅の動産の差押えに行ってもらって
も,差押えが許されていない家財道具程度しかな
く,空振りに終わるケースが多いですからあまり期待できませんね。
A Cさんが 財産を隠しているのではないかと思うと悔しい のです。
せっかく裁判で勝ったのに,
このままでは,判決は「絵に描いた餅」になってしまいます。
Cさんの財産がどこにあるかさえ分かれば・・・。
B 裁判所に「財産開示手続」を申し立て れば,
Cさんの財産の有無や所在などが分かるかもしれませんよ。
A 財産開示手続とは,どのような制度なのですか? B 判決等の内容に従わない債務者の財産を開示させる制度です。 このような制度は,以前から,ドイツ, アメリカ,韓国等にあって, かなり利用されていました。 |
日本でも同様の制度が必要だという声が高まり
平成15年の民事執行法の改正により制度化されたのです。
財産開示手続で財産が開示されて,債務者が価値のある財産を持っていることが分か れば,その財産について強制執行の手続をとることが
できます。
ただし,例えば不動産に抵当権がたくさん設定
されているような場合は,競売にかけても配当等を
受けることができないでしょう。
それに,そもそも価値のある財産がない場合や,
相手が財産開示手続に応じない場合もあり得ますから,
費用をかけて財産開示手続の申立てをするメリットがあるかどうかは
ケースバイケースです。
実は私がCさんの財産についてあれこれ質問したのは,
財産開示手続を申し立てるべきかどうかを考えていたからなのです。
A そうだったのですか。
財産開示手続は,だれでも申し立てることができるのですか?
B 財産開示手続の申立てができるのは,
金銭の支払を内容とする 確定判決 や 和解調書 ,
調停調書 などを持っている債権者に限られます。
支払督促や公正証書しか持っていない場合は,
申立てができません。
A ほかに 申立てに必要な要件 はありますか?
B 申立てをするには,その債務者に対する強制執行等で
債権全額の回収ができなかった場合か,
判明している債務者の財産に対して強制執行を
しても完全な回収ができそうにない場合のいずれかである必要があります。
A 具体的な 手続の流れ は,どのようなものになるのですか?
B まず,債務者の住所地を管轄する 地方裁判所に,
財産開示手続の申立てをすることから始まります。
裁判所は,申立てが相当だと判断すれば,
債務者の財産を開示させる手続を実施するという決定
(実施決定)をします。
A その実施決定が出れば,すぐにCさんの財産のことが分かるのですか?
B Cさんにも言い分があるかもしれませんし,
すぐにCさんの財産のことが分かるというわけではありません。
例えば, 一度全財産について開示していれば,
原則として3年間は改めて開示しないで済みます ので,
以前に全財産を開示したという理由で
Cさんから不服申立てがされるかもしれません。
裁判所の実施決定が確定すると,裁判所は,あなたとCさんに
裁判所に来てもらう日時(財産開示期日)を決めて呼び出すことになります。
A 指定された日時に裁判所に行けば,Cさんも必ず来ているのですか?
B 呼出しを受けたCさんは,財産開示期日に出頭し,
宣誓した上で自分の財産の状況を陳述する義務
を負うことになります。
もし 正当な理由がないのに出頭しなければ,
30万円以下の過料 の制裁を受けることになります。
A どのような財産がどこにあるのかをCさんは一つ一つ
説明するのですか?そのようなことをしていたら,
何時間もかかると思うのですが・・・。
B そのようなことがないように,Cさんは,あらかじめ
自分の財産の状況を記載した財産目録を作成
して,決められた日までに裁判所に提出すること
になっています。あらかじめ提出した財産目録に
変更がなければ, 財産開示期日に宣誓 をした上で
「私の財産はこの財産目録のとおりです」などと陳述
するだけということになります。
A Cさんはこれまで「払う。払う。」と言って全然支払わな
かった人なので,財産開示期日でうそを言うのではない
かと心配なのですが・・・。
B 財産開示期日で宣誓しなかったり,宣誓した上で陳述
すべきことを陳述しなかったり,あるいは 虚偽の陳述 を
したりすれば, 30万円以下の過料の制裁を受けることになります。
A Cさんは必ず財産を持っていると思いますので,申立てをするのに必要な
準備をした上で申立てをしてみます。
B ただ,この制度は財産状況を強制的に開示させるものですので,
債務者の プライバシー が不当に侵害されることがないように,
債権者がこの手続で得た情報を目的外に利用することなどが
禁止されています。
これに 違反 した場合は, 30万円以下の過料 の
制裁を受けることになりますよ。
A よく分かりました。今日はいろいろありがとうございました。
債権者は質問できる! 債務者は債権者から身を守ろうとして、 不動産や預金の名義変更を することがよくあります。債務者が 陳述しなければならないのは 陳述時点での財産状態であり、 名義変更済み財産への陳述は不要 です。 |
したがって債務者はホッとするかもしれませんが、
債権者は債務者に対して質問をすることができます。
「家族名義に預金を移したのか?、実質はあなたのだろう?」
と質問され、 裁判官の前で嘘をつくには余程の度胸がいります し、
罰則の対象にもなります。
移転したことが分かれば、その結果によっては 詐害行為取消権 として、
過去の贈与や売買を、債権者の立場から取り消そうとすることも可能になります。
確定判決を実現するための制度
財産開示手続は「確定判決を実現するため」の制度です。
従って、申立人の要件は「執行力のある債権名義の
正本を有する債権者」(民事執行法197条1項)となります。
なお、財産開示手続における「 債務名義の正本 」とは
次のような書面のことを指します。
①執行文の付与が必要なもの
・ 判決正本
・ 手形判決正本
・和解調書正本
・民事調停調書正本
・訴訟費用額確定処分正本
②執行文の付与が不要なもの
・小額訴訟判決正本
・家事審判正本
③執行文が必要な場合と不要の場合があるもの
・家事調停調書正本
(調停で養育費を定めた際の書面)
※債務名義と扱われないもの
逆に以下の書面は債務名義と扱われないので注意が必要です。
・仮執行宣言付判決
・仮執行宣言付支払督促
・確定した支払督促
・公証人の作成する執行証書
※離婚協議書を「強制執行認諾約款付公正証書」として作成した
ものは「公証人の作成する執行証書に含まれます。
開示しない場合の罰則
不出頭・陳述拒否・宣誓拒否・虚偽の陳述 開示を命じられた債務者は、裁判所で開かれる 開示期日に出頭し、 宣誓した上で、自分の財産について陳述し、 また裁判所や申立人の質問に 答えなければなりません。 正当な理由もなく出頭しなかったり、 宣誓を拒否したり、 |
陳述を拒否したり、虚偽の陳述をした場合は過料が科せられます
(民執第199条、第200条)。
開示手続を円滑に行うためには、あらかじめ債務者から開示する
財産の目録を書面で提出させる必要があるでしょう。
陳述する義務の一部免除
一部免除の要件は厳しい
債務者は、事前に陳述義務の一部免除の申立ができると解されていますが、
その場合には一部について財産目録の提出が必要となるでしょう。
この場合、一部免除の判断は期日においてすることになりますが、一部免除の要件が厳しいことからすれば、認められる場合は限られたものになるでしょう。
その場合には、改めて続行期日が指定されることも考えられます。
財産開示手続の要件
プライバシーを保護するため・・・
確定判決を受けたのにもかかわらず、債権者が債権を
回収できない背景には、債務者が財産についての情報を
隠匿しているなどの理由がありますが、同時にプライバシーの
保護という観点から積極的に情報開示を
追及できなかったという点もあります。
つまり、財産についての情報が開示されないのは必ずしも
債務者に非がある理由だけではありません。
そのような観点から、財産開示手続は誰でも気軽に簡単に
利用できる制度とはなっていません。
この手続の利用には以下のような要件が満たす必要があります。
財産開示手続きを利用するための要件
1、執行力のある 債権名義の正本 を有する債権者であること
2、現状では 完全な弁済が得られないことの疎明 があること
3、債務者が 3年以内に財産開示を行っていないこと
現状では完全な弁済が得られないことの
疎明がある事
財産開示手続を利用するには次のいずれかの「疎明」が必要です。
(a)強制執行で申立人が債権の完全な弁済を得られなかった
ことの疎明
○疎明する際の提出資料(例)
・配当表又は弁済金交付計算書の謄本
・開始決定正本又は差押命令正本・配当期日呼出状など
(b)知れている財産に対する強制執行では債権の完全な弁済を
受けられないことの 疎明
「不動産を所有していないこと」「無剰余であること」を
疎明する際の提出資料(例)
・不動産登記簿謄本
・調査結果報告書
「完全な弁済を得られる債権が存在しないこと」、
「勤務地、給料等が不明であること」を疎明する際の提出資料(例)
・商業登記簿謄本
・調査結果報告書
「動産に価値がないこと」を疎明する際の提出資料(例)
・第三者の陳述書
・聴取書
・調査結果報告書
※参照条文 (民事執行法197条1項1号・2号、2項1号・2号)。
※疎明
疎明は証明とは異なります。
証明とは、ある事実について裁判官が確信を抱いてよい状態に達するまで
証拠を提出することをいい、
疎明とは、証明の程度までは至らないが「 一応確からしい 」と
推測できる状態に達するまでの証拠提出活動をいいます。
3年以内に財産開示を行っていないこと
債務者が申立の日より前 3年以内 に財産開示をしている場合、
債権者は財産開示を要求 することができません(民事執行法197条3項)。
ただし、債務者が財産開示の際に一部の財産に
ついてのみしか開示しなかった、前回の財産開示後に
新たな財産を取得している、雇用関係に変動があったなどの
事由がある場合、 財産開示を請求することは可能 です。
その場合申立人による 各事由の証明 が要求されます。
なお、裁判所に提出する書類・法律相談は直接弁護士へご相談ください。
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