DVとは
ドメスティック・バイオレンス(domestic violence)、
略してDV(dv)とは直訳すると「家庭内暴力」となります。
「家庭内暴力」と言うと夫から妻、親から子、子から親、兄弟間の暴力と取れますが、DVという言葉には明確な定義付けはありません。
一般的には「夫や恋人など、親密な間柄にある、
またはあった男性から女性に対して振るわれる暴力」と捉えられています。
ですが、最近では女性から男性へのDVも増えてきており、
法律においても人によって異なる意味に受け取られる
「ドメスティック・バイオレンス(DV)」と言う言葉は使われておらず、
また被害者を女性には限定していません。
DVの種類
DV(dv)には殴る、蹴るといった身体的な暴力だけだと思っている方も多いと思います。
DVには様々な種類の暴力があります。
身体的暴力
最も一般的に「暴力」と呼ばれるもの。体に直接に行われるもの。
例:殴る、蹴る、物を投げつけるなど
精神的暴力(心理的暴力)
言葉による暴力や嫌がらせなど、直接的には暴力を振るわないものの、被害者の心に苦痛を与えるために行われるもの。
例:大声で怒鳴る、脅す、被害者が大切にしているものを壊す、勝手に捨ててしまうなど
経済的暴力
経済(力)を通じた締め付け。
例:生活費を渡さない、働きに行かせない、被害者の貯金を奪ってしまうなど
性的暴力
性を用いた暴力。
例:性行為を強要する、避妊に協力しないなど
社会的暴力(社会からの隔離)
社会的な行動を制限するもの。
例:親や家族や友人と連絡を取らせない、外出を制限したり禁止したりする
上記の暴力はすべて、被害者を支配するために用いられます。
身体的暴力がないからといって、DVではないということはありません。
DVの本質
DVは力で相手を支配しようとするものです。
DVでは相手を支配するために上で述べたような色々な形態の暴力が振るわれます。
身体的暴力はその支配を絶対的なものにするための手段で、外側から最も認識しやすい暴力ではありますが、DVの本質ではありません。
DVは、加害者が被害者を一方的に支配するというところに本質があります。
力を使って相手を怖がらせ、コントロールするのです。
支配を可能とするのなら加害者は暴力の形態を問わないのです。
むしろ、支配するために相手にとって効果的な暴力を選んでいるのです。
DVの周期(サイクル)
DVのすべてとは限りませんが、DVには周期(サイクル)があると言われています。
緊張蓄積期
爆発期
蜜月(ハネムーン)期の三つです。
緊張蓄積期
これは「そろそろひどい暴力が起こりそうだ」と被害者が予感し、緊張と不安の中で加害者の様子を毎日びくびくと伺いながら生活している時期のことです。
激しい暴力は起こりませんが、加害者は言葉や態度で被害者を脅かしたり、馬鹿にしたりします。
被害者は加害者を刺激しないように懸命に気を使いますが、それらは爆発期を先延ばしにすることはできても、回避することはできません。
なぜならDVの原因は、被害者ではなく加害者自身にあるからです。
爆発期
加害者の暴力が最も激しい時期です。
被害者を殴る・蹴る・物を投げつけるといった暴力が振るわれます。
DVのきっかけは些細なことであり、時には被害者と全く関係のないことであったりします。DV加害者は何かのきっかけを見つけて被害者を責め、そして激しい暴力へと移行していくのです。被害者が暴力に抵抗しても加害者は「自分に逆らうのか」と逆上し、更に激しい暴力を振るいます。暴力を振るわれている間は、被害者は加害者を刺激しないようにじっと耐え、身を守るすべしか持たないのです。
蜜月(ハネムーン)期
加害者が泣いて謝ったり、
二度と暴力を振るわないと約束したり、
贈り物をしたりするなど、
一時的に努力する時期です。
これが本来の姿であるかのように
思いこんでしまいますが、長くは続かず、
また緊張蓄積期に戻ります。
蜜月期は「被害者が自分から離れて行かないように」
するための加害者の策略の一つなのです。
以上の三つの周期を繰り返しながら DVは行われています。
蜜月期において、被害者は謝る加害者を
許してしまったり、優しくされて
「自分にも悪い所があったのかも…」と
思ってしまいます。
ですが、それは
加害者が被害者を支配するための一時的な優しさなのです。
被害者はその優しさに希望を持ったがために、長い間DV被害にあってしまうのです。
そして、周期が回転するたびに、暴力はエスカレートしてより危険なものになり、
蜜月期(ハネムーン期)は短くなり、暴力の頻度は増していきます。
DVによって被害者が受けるダメージ
DVで行われる暴力のすべては種類を問わず、被害者の尊厳を傷つけたり、奪ったり、その人格を否定するものです。
そしてDVが行われる場所は、加害者と被害者の関係上、家庭内など被害者が避けられないところで行われるのです。
いつ起こるか分からない身体的暴力への恐怖や不安、その他の暴力からくる締め付けや不自由な生活によって、被害者は肉体的にも精神的にも大きなダメージを受けることになります。
(コラム1)
DV悩み、夫を絞殺
夫のDVに悩み、夫を絞殺した容疑で妻が逮捕されるという事件がありました。
「自宅で夫を殺した」と妻が自首してきたそうです。
離婚を巡って口論になり、夫の首を電気コードで絞め、殺害した疑いだそうです。
妻は事件より以前に「3年前から、夫に殴る蹴るの暴行を受けている」と警察に相談していたそうです。
署員から「被害届を出せば捜査する」と説明されたが、「そこまでしたくない」とためらい、その後、来なかったという。
署の説明では「相談時に助言しており、対応は適切だった」と話しています。
※読売新聞、2007/08/31の記事より引用
DVによって子どもが受ける影響
一方の親が他方の親に行うDVを見ることは、
子どもに大きな影響を与えます。
見ることによる精神的虐待はもちろん、DVが
起こっている家庭では、身体的虐待を受ける
子どもは少なくありません。
DVを受けている
親を助けようとして巻き込まれたり、被害者への
精神的暴力を与えるために加害者から暴力を振るわれたりします。
DVによって子どもが受ける影響は様々です。
いつ暴力を振るわれるのかと、不安感や睡眠障害、摂食障害などのストレス症状が出たり、DVを受ける親を助けられないという無力感や罪悪感を持ってしまったりします。
また、暴力で物事を解決することを学習してしまう子どももいます。
男性もDV被害者になる
統計などを見ると、夫婦間のDVは圧倒的に夫から妻への
ケースが多いです。
しかし、妻からの夫への、つまり女性
から男性へのDV被害も徐々にではありますが、増加して
きています。
男性の場合は、夫婦間の問題を第三者に話す
のが恥ずかしい、あるいは世間体が悪いと考えてしまい、
「誰にも相談できない・しない」となり、なかなか表面化
しにくいのかもしれません。
男女にかかわらず人は誰でも、殴る・蹴るといった身体的暴力、「もっと働け」「甲斐性なし」などと言うような精神的暴力などに苦痛を感じます。
女性から男性へのDVについても、もっと深刻にとらえる必要があると言えるのではないでしょうか。
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法)では、被害者を女性には限定していません。
DV防止法
DVを取り締まる法律として、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」があります。
略して、「DV防止法」、「配偶者暴力防止法」などと言います。
この法律では、人によって異なった意味に受け取られるおそれがある「ドメスティック・バイオレンス(DV)」という言葉は正式には使われず、「配偶者からの暴力」という言葉が使われています。
また、DV防止法は被害者を女性には限定していません。
このDV防止法は、DV関係のすべてに適用されるわけではありません。
適用の範囲は配偶者と元配偶者です。
配偶者には事実婚(婚姻届を出してはいないが、事実上婚姻状態にある関係)を含み、元配偶者には事実婚の解消も含まれます。
これ以外の、現在交際している、もしくは交際していた相手からのDVには適用されません。
DV防止法は平成20年1月11日に改正されました。保護命令制度の拡充、市町村に対する
基本計画策定の努力義務などが定められました。
保護命令
被害者が更なる配偶者からの暴力または生命等に対する脅迫により、生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、裁判所が被害者からの申立てにより、配偶者に対して発する命令のこと。
1被害者への接近禁止命令
2被害者への電話等の禁止命令
3被害者の同居の子への接近禁止命令
4被害者の親族等への接近禁止命令
5被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令
の5つがある。
保護命令の申立ては、DVがあった状況などの一定の事項を記載した申立書を、相手方の住所または被害者の住所、居所もしくはDVが行われた場所を管轄する地方裁判所に提出して行うようです。
(コラム2)
市町村に期待されるDV対策
今まではDV(dv)に関する相談をしたくても、相談窓口を「たらい回し」にされるといった問題点がありました。
そんなDV対策に関してこんな記事がありました。
DV対策に本腰を入れる市町村が増えてきているとのことです。
2008年1月に施行された改正DV防止法は、これまでは都道府県の責務だった、配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)の設置などを市町村の「努力義務」として明記しました。
改正法施行と同時に国が示した「基本方針」では、「市町村は被害者に最も身近な行政主体として積極的な取り組みを行うことが望ましい」としています。
被害者の身近な生活支援に直接かかわる市町村の役割が期待されます。
・千葉県野田市
改正法施行と同時に「配偶者暴力相談支援センター」を設置。
家賃助成や児童手当の申請など複数部署にまたがっていた生活関連の申請・手続きも、
センター担当者らが一括して進める。
・神戸市
法施行に先駆け、2006年11月に、「女性のためのDV相談室」を設置。加害者にわからないように、場所は明らかにしていない。女性相談員3人が電話で受け付け、必要があれば面接やカウンセリング、自宅への出張相談を行う。
・岡山市
2002年4月から、相談支援センターを設置。女性相談員4人が面接や電話で話を聞く。
「夫から逃げ出したため泊まる場所がない」などの緊急事態では24時間対応で一時保護を行っている。
※読売新聞、2008/03/19の記事より引用
(コラム3)
DVと定額給付金
DV(dv)と定額給付金をめぐってこんな記事がありました。
夫からのDVから逃れるために居住地を隠して別居する女性二人が、定額給付金を受け取れないのは不当として、世帯主である夫への家族全員分の給付を差し止める仮処分申請を申し立てるとのことです。
給付金の交付方法は、住民登録に基づき世帯ごとに支給すると、給付金交付要綱に規定されています。
しかしDV被害者は別居後の住所を加害者に知られないように、住民票を移動しないケースが多いのです。
このため、制度上は世帯主の夫が申請すれば、一家全員の給付金を受け取ることになります。
代理人の弁護士らは仮処分が認められれば、DV被害と別居の証明をすれば、分離して受給できるように求める方針だそうです。
これに対し、総務省は「二重給付を防ぎつつ、公平に行き渡らせるには住民登録が前提」としています。
※読売新聞、2009/04/24の記事より引用
なお、DV(dv)に関する法律相談は弁護士に直接ご相談くださいますように予めご了承ください。
DVの解決法
加害者の暴力行為を止めさせる効果的な方法はありません。
DV加害者には「自分が加害者である」という自覚がありません。
加害者を更生させるには、加害者自身の「DVを止めたい」という強い気持ちが必要となるのです。
ですからDVには決定的な解決法はありません。
被害にあっている方はDV防止法を活用したり、配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)を利用し、まずは自分と子どもの身の安全確保を優先して下さい。
「夫の暴力から逃げるために、突然家を飛び出したので泊まる場所がない」といった場合には、一時保護施設や民間シェルターもありますので、DVセンターで相談してください。
もし離婚を考えるなら、専門家に相談し、離婚に関する手続きや子どもの養育費の問題などの相談をしてみてください。
以下に夫若しくは妻からの暴力に関して
相談できる機関を一通り記載しております。
機関名< | 電話番号 | 相談日 | 窓口受付時間 |
---|---|---|---|
神戸市男女共同参画センター | 078-361-8361 |
火~土 | 10:00~16:00 |
神戸市男女共同参画センター | 078-361-8935 (面接予約) |
火~土 | 9:00~17:00 |
保健福祉部(東灘) | 078-841-4131 | ||
保健福祉部(中央) | 078-232-4411 | ||
保健福祉部(北) | 078-593-1111 | ||
保健福祉部(長田) | 078-579-2311 | ||
保健福祉部(北播磨) | 078-793-1313 | ||
保健福祉部(西) | 078-929-0001 | ||
保健福祉部(灘) | 078-843-7001 | ||
保健福祉部(兵庫) | 078-511-2111 | ||
保健福祉部(北神) | 078-981-8870 | ||
保健福祉部(須磨) | 078-731-4341 | ||
保健福祉部(垂水) | 078-708-5151 |
|
|
兵庫県立女性家庭 センター |
078-732-7700 | 9:00~21:00 | |
保護命令の相談 | 110 | ||
ストーカー相談 | 078-371-7830 | 月~金 | 9:00~17:30 |
レディースサポートライン/td> | 078-351-0110 | 月~金 | 9:00~17:00 |
女性の人権ホットライン | 078-393-0339 | 月~金 | 9:00~17:00 |
W・Sひょうご | 078-251-9901< | 木< | 12:00~17:00 |
ウィメンズ・ネット・こうべ | 078-731-0324 | 月~金 | 10:00~16:00 |
フェミニスト・カウンセリング(神戸) | 078-360-5030 | 月 | 13:00~16:00 |
外国人県民インフォメーションセンター | 078-382-2052 | ||
神戸国際コミュニティセンター | 078-291-8441 |
最後に、暴力の原因としまして、
お酒を毎日大量に飲む等の
アルコール依存症
に関しても参考にしてみてください。
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